アート感覚

No.12 2019年04月4日 01時17分53秒

デザインとアートは明確に違うと僕は思っていますが、かといって、デザイナーにもアート感覚は絶対に必要だと思います。
別に僕は絵画に詳しいわけでも、作者に詳しいわけでもありませんし、自分の好きな絵の作者がどこかの無名の人だったりすることが多いわけですが、その絵を見て、その絵がアタマの中で動き出して、どこからともなく音が聞こえてきて、匂いがしてきて、ジトッと少し汗をかく。
まったく関係のないメッセージが浮かんできて、作者が意図しない物語を勝手に紡ぎ出したりする。

デザイナーにとってこういう感覚が必要だなあって思うのは、やっぱり、喜怒哀楽が作品に表れるから、だと思います。
喜怒哀楽のあいまいな作品には、総じて色気を感じなかったりするし、あとはこの喜怒哀楽をどんな風にデザインの要素として落とし込めるか、が腕の見せ所。
あとは、コミュニケーションスキルというか、洞察力というか、観察力というか、そういうスキルを磨くにも、このアート感覚は役に立つのではないのかなあと。
つまり、相手が今、何を考えていて、どう感じているのかを的確に感じ取るスキルというか、そういうスキルを鍛えるのは、普段からの「想像の習慣」が大切だと思うのです。

僕のサイトで公開している「デザインとデザイナーの説明書」の中で、「壁に掛かっている絵画がアートで、それを壁に掛けることがデザイン。」と僕は書きました。
よくわからなくても、美術館やギャラリーに行って、「目利き力」を鍛えることもデザイナーには必要だし、難しいことは抜きにしても、何かを感じ取る力は、何事においても、やっぱり大切です。

以前、友人の女性デザイナーが岡本太郎展を見にいく際に、私にはアートがよくわからないんですが、どういう風に見ればいいでしょうか、という質問を受けました。
難しく考えずに、でも何度も見てみて、君がどの作品に「濡れる」か、じゃないかな。
っと、サラッと言ったものの、どん引きされるかと思いきや、「なるほど!」って言ってもらえたので助かった(笑)。
確かにちょっと乱暴すぎるアドバイスだったと思うけど、何かを感じる時は、アタマではなくて、体や心や魂であるはず。

こういうことも、学者さん達ならもっと科学的に説明してくれるんでしょうけど、僕にはそんなアタマはないので、なんとなくの説明で申し訳ないんですが、普段から積極的にアートに触れつつ、これをどうすれば多くの人に見てもらえるか、これを知らない人に、どう説明すれば的確に伝わるか、そんな風に、デザイン的に考えてみるクセが、普段のデザインの仕事にも大いに役に立つのではないかなあと思います。

CATEGORIES : BLOG
© WIPE BY DRAGONBLOOMS INC.