数年前、障がい者の支援施設「しょうぶ学園」の施設長である福森さんの講演を拝聴する機会がありました。その中で、「健常者は自由で、障がい者は不自由だと思っている人がいるけど、それは違う。障がい者には時間も制約も関係がなく、何をしてもいいし、何もしなくてもいいし、1日中穴を掘っていてもいい、1日中絵を描いていてもいい。心の向くままに生きている彼らは、時間や制約や常識に縛られて生きている僕ら健常者よりもよっぽど自由なんだ。」というお話を聞いて、心に深く突き刺さるものがあり、同時に、自分達がなんて狭い常識の枠の中で暮らしてきていたかを痛感しました。

その後、障がい者の雇用促進事業を県から受託することになり、三重県中の作業所とやりとりさせていただく中で、多くの誤解と偏見によって、または、健常者に合わせて設計された社会の中で、障がい者と一般の社会の中には、ものすごく高い壁や、深い溝があることを知りました。デザインは、問題解決においても、優れたツールであるはずです。ならば、デザインの力で少しでもサポートできないだろうかと思い立って立ち上げたのが、「バードライク」のプロジェクトです。



障がい者の多くは、「作業所」と呼ばれる支援センターで働いています。作業所では、単純作業が中心となります。ですが、彼ら彼女らの中には、健常者以上に優れた能力や技術を持っている人達が少なくありません。この才能をもっと社会に活かすことが出来れば、社会の中での彼らの居場所をもっと作っていけるのではないか、と考え、仕事を依頼したい依頼者と、仕事を受けたい作業所をマッチングするサービスを準備中です。テーマは、「キミにもできること、キミにしかできないこと」。彼ら彼女らが持つ、無限の可能性を正しく伝えていくことが、デザインの役割であると位置づけ、現在、大急ぎでシステムを整えています。



実は、このプロジェクトを立ち上げたそもそもの理由は、車椅子のまま乗れるブランコを作りたい!と思ったのが始まりでした。海外にはすでに色々なタイプの車椅子用のブランコがありますが、日本ではほとんど見かけることがありません。生まれてから一度もブランコに乗ったことがないという人も少なくないことがわかり、ではなぜ、車椅子のまま乗れるブランコがこんなにも少ないのかを調べていくことにしました。

そこでわかってきたことは、(1)安全性の問題で、公園などに設置する場合の基準がものすごく厳しいということ。(2)高い安全基準をクリアするためには、開発にも相当なコストがかかるということ。だいたいはこの2つが大きな問題だということがわかりました。

ならば、家庭用にターゲットを絞れば、手軽で安価なブランコが作れるのではないか?と考え、それはまさしく、デザインやクリエイティブの役割であり、大勢の人を巻き込んでいくことができれば、実現できるかも知れないと、心が躍りました。ですが現実はそう甘くはありません。協力者を見つけることは困難を極めます。現在もまだ、プロジェクトを進めていくために必要最低限な体制も整っていません。

ですが、諦めたわけではなく、時間はかかるかも知れませんが、いつか必ず、車椅子のまま乗れる家庭用のブランコを 完成させてみたいと思います。どうか、ご理解、ご支援をお願い致します。

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