八十八屋

No.4 2019年02月10日 01時43分23秒



昨日、無事にオープン日を迎えたおにぎりとお米のお店「八十八屋」。
雪が降る極寒の中、多くの方々がご来店くださいました。
スタッフの中にも、慣れている人とそうでない人がいて、お客様にご迷惑をお掛けする場面もありましたが、寒空の下で、早速におにぎりを食べられた方々から聞こえてくる「おいしいー!」の声に勇気づけられました。

八十八屋さんは、お米ひとすじ40年余年、という地元の「長井米生活農場」さんという農家さんが運営されていますが、ショップの運営に関しては全部が初めてのことで、右も左も上も下も何もわからない、だから丸川さん、頼む!と、縁あってこのお話をいただきました。

これまでにも色々なショップの立ち上げをプロデュースさせていただきましたが、毎度新たな発見があり、とても貴重な経験と学びをいただきます。
ちょっとだけデザイン的なお話をさせていただくと、今回のケースにおいてまず最初に考えたのは、「そこにあるべきおにぎり屋」の「正しい風景」を見つけること。
それが見つかれば、仕事の9割はもう済んだようなものです。

どこにでもありそうな、ありきたりなおにぎり屋でもなく、チェーン店的なつまらなさではなく、ただカッコいいだけのおにぎり屋でもなく、今回は、カッコよさとカッコ悪さ(カッコ悪さも大事!)をどの配分で和えれば、ちょうどいいバランスになるのかを時間をかけて考えました。

例えば、オリジナルロゴのスタンプを押しただけのお米のパッケージに、お店の人から、お米の名前を印刷したシールをたくさん持ってるから、それを貼っていいですか?と聞かれ(聞いてくれるだけ本当にありがたい!)、しぶしぶの顔で、いいですよと応じます。
ここがすごく大事で、本当なら、パッケージにちゃんと合うシールでないといけません。
そこに、JAで売られているような、めちゃくちゃかっこ悪いシールを貼られたら台無しです。
でもあえて、しぶしぶ顔で、OKを出します。
ほかにもそういった箇所がいくつもありますが、なぜ、細部まで僕のデザインで統一しないのかと言うと、ひとつは、それがとても「田舎感」を演出してくれる要素であることと、そして、なぜこのデザインなのかの意味を理解してもらうための伏線だから、です。

ところどころバラバラな感じは、田舎のあるある感が満載です(笑)。
そしてもちろん、少しずつ、少しずつ、ちゃんと正しく整えていきます。
そうやって少しずつ統一感が出ていく様子を目の当たりにしていくと、今まで何とも思ってなかった、例えばお米の名前のシールについても、「これ、合ってないよね?」ということにだんだんと自分達で気づけるようになります。

そうならないと、「その土地に根付くお店」、つまりは、「そこにあるべきおにぎり屋」にはなれません。
デザイナーが全部を決めてしまうことの弊害を何度も経験してきたからこそわかることですが、僕がそこでずっとおにぎり屋をやっていくのなら全部を僕が決めてしまえばいいですが、「八十八屋」は八十八屋さんのお店です。
彼ら彼女らが続けていくお店。
「正しい風景」を作っていくのは、そんな彼ら彼女らです。

八十八屋というおにぎり屋さんが、山の、田舎の、飯高の、そこにあるのが当たり前の風景になるには、まだ何年もかかります。
そこにある意味、そこで提供するべき価値、そこにあるべき風景。
少しずつ洗練されていくデザインと、そのスピードとちゃんと同じスピードで成長していくスタッフの方々の物語を紡いでいくためのデザイン。
デザインが、中の人達を置いてきぼりにしないこと。
それが、今回のケースで僕が目指したデザインです。

八十八屋さんのメンバーはみんな真面目で優しい人達でした。
それがもろにおにぎりにあらわれています。
これからもっともっと素敵なお店になっていくはずです。

ぜひとも、大切な人と一緒に、または、大切な誰かを想いながら、食べてみてください。

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